最近、死後の手間を子どもたちに掛けたくないと、身の回りの物から不動産・現金に至るまでを生前に整理しておく「終活」に励む高齢者が増加しています。
とはいっても、いざ終活すると決めたけど、何から始めていいかわからない…こんな感じで、困惑する方は少なくありません。
終活に関連して、最近名前が聞かれるようになったのは「エンディングノート」です。
「エンディングノート」は、生前にさまざまな整理をするのではなく、没後に遺族が遺品整理や財産処分を行うときの「お願い」を書き残しておくものです。
今回は、エンディングノートとはどんなもので、作っておくことでどのようなメリットがあるのかを詳しく解説します。
目次
終活に欠かせない「エンディングノート」とは?
エンディングノートとは、その名のとおり、自分が亡くなった後に遺族にして欲しいことなどと書きまとめて残しておくためのノートのことを言います。
特に専用の様式はありませんが、最近は大手書店などで所定の項目などをすでに記載してある物も販売されるようになっています。
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相談にかかる費用は無料のため、ぜひお気軽にお越し下さい。
エンディングノートは、財産の状態や自分の死を連絡して欲しい人の一覧など、死後に遺族がそれを見ることでさまざまな対応をスムーズに行えるように残しておく「覚え書き」であり、自身の意向を伝える「お願い」と考えてもらえればいいでしょう。
そのため、既存のエンディングノートには、のちの章で紹介する「記載すべきこと」がすでに項目として設けられており、誰でもわかりやすく作りやすいノートとなっています。
エンディングノートに記載すべきこととは?
それでは、エンディングノートに記載しておくべき内容と、その理由について解説します。
希望する葬儀や供養の内容
親の世代と子どもたちの世代とで、考え方が分かれることが多いのは「葬儀」です。
最近は「家族葬」や「直葬」など、さまざまなスタイルの葬儀がありますが、金銭的な遺族の事情や、親族間の関係性、コロナウイルスの感染を防ぐためなど、さまざまな理由で近親者のみで葬儀を行うことが増えています。
特に子どもたちの世代は、手間をかけないで葬儀を行いたい意向や、そもそも宗教的なしきたりを知らないことが多く、葬儀そのものの段取りがわからないのでシンプルに…との意向があるようです。
葬儀については親の世代の方が考え方を持っていることは事実ですから、何か願いがある場合はエンディングノートに記載しておくことがおすすめです。
形見分けの内容
自分の使っていた愛用の品物などを、どうしてもあの人に渡したい…長い間生きていれば、そのように愛着の生まれる品物も出てくるでしょう。
遺産相続では、不動産や価値のある骨とう品などについては触れられますが、故人の愛用品レベルの品物については触れられることは少なく、故人の思いが果たされない場合もあり得ます。
そのため、故人の愛用品レベルの「形見分け」については、エンディングノートに記載しておくことがベストでしょう。
財産に関する情報
遺産相続の中では、当然預貯金や保有株式、不動産についても細かく記載されることになり、それぞれを誰が引き継ぐのかまで明記しなくてはなりません。
ですが、遺族が困るのは「どこにどれだけ財産があるのか」がわからないことです。
そのため、あらかじめ財産目録をエンディングノートに記載しておくことで、遺産相続の手続きをスムーズにしてあげることができます。
例えば、銀行の口座番号や預貯金額を書き残しておくことや、最低でも金融資産の一覧や預金通帳のありかを知らせておくべきでしょう。
友人の一覧
故人となってから、自分の死を伝えて欲しい人は何人かいると思います。
特に最近はコロナ禍であることから、遠方の友人に会う機会もめっきり少なくなってしまいました。
ですので、せめて自分が亡くなったことだけは確実に伝えたい…そう願う場合は、エンディングノートにそれらの友人の連絡先を書き残しておくといいでしょう。
友人に限らず、お世話になった病院の先生や学校の恩師など、自身の死を伝えたい人がいればぜひエンディングノートに書き残しておきましょう。
その際、一緒に「直筆の手紙」を残しておくのもおススメです。
エンディングノートの一ページ分を「原紙」として書き綴り、それを遺族にコピーしてもらって、友人等に配ってもらうこともよく行われています。
エンディングノートと遺言状の違いとは?
エンディングノートと同じように思えるのが「遺言状」です。
エンディングノートと遺言状は、比べてみると大きな違いがあるのです。
その点について、この章で詳しく解説します。
自分自身の為に書くのがエンディングノート
「人生100年時代」という言葉が聞かれるようになり、日本国民の平均寿命は年々延びていますが、いつまでも自分が全部行えるかと言えば、そうではありません。
介護を必要とせず元気でいられる時間…いわば「健康寿命」について考えると、長生きはしても自分がすべてを決定し、行動できる時間はそれよりも早く終わりが来るかもしれない…エンディングノートは、自分自身の人生を見つめなおす機会として有効なツールでもあります。
エンディングノートを作成することで、自身の人生においてやりのこしがないか確認できますし、作っているうちに「今だからできること」が見つかり、今の人生を有意義に過ごせるようになる効果もあるのです。
法律的な根拠とみなされるのは「遺言状」だけ
法律上「故人の遺志」とみなされるのは、実は遺言状だけです。
遺言状は、財産の処分に関わるため、第三者の証明が必要であり、最低でも本人が確実に直筆で記載した物であるかなどの確認を求められるもののため、作成するのが面倒だという声もあります。
でも、それだけの証明がなされているからこそ、裁判においても有効な書類として扱われ、法律で決まっている相続配分よりも、遺言状で記載された配分の方が優先されるわけです。
そのため、エンディングノートに財産相続の希望を記載しても、法律的な根拠ではみなされないので、十分注意しましょう。
必要ならば遺言状を作っておくこともおススメです。
故人の「思い」を伝えるエンディングノート
エンディングノートの役割には、「故人の思い」を伝えるものです。
一方遺言状は、法律に基づく相続などの行為を決定する際の「指示書」であり、その内容は法律的にも重要視される性質のものです。
これら2つの使い分けをすることを理解できれば、エンディングノートに何を書くべきか分かってくるでしょう。
例えば、葬儀の方法や埋葬の方法、自身の死に関わる連絡などは、エンディングノートに書き残しておくとよいでしょう。
エンディングノートの内容が必ず実行されるとは限らない
法律におけるエンディングノートの扱いを考えると、じつはエンディングノートには「法律上の根拠」がありません。
そのため、遺族はノートに書かれている内容を実施しなくても、外部からの批判は受けるかもしれませんが、法律上の罪に問われるわけではありません。
一方、遺言状の場合、例えば「お墓を管理する次男に財産の3分の1を譲る」と記載があり、それに基づいて次男が相続をする「条件付き相続」がなされた場合、当然条件を履行しなければ訴訟を提起することができます。
他の相続人が「あいつは約束を守っていないのに財産を相続だけしてずるい」…これだけで訴訟を提起するには十分な理由があり、実際にこの訴訟が行われれば間違いなくこの次男は敗訴します…遺言状は、それだけ法律の根拠となるのです。
エンディングノートを作るタイミングとは
では、エンディングノートはどんなタイミングで作ればいいのか、少し考えてみましょう。
人生の歩み方も負い方も違えば、当然タイミングも違ってくるものですが、ここでは私なりにお勧めできるタイミングをご紹介します。
退職金が得られるなど、財産の整理と再確認をするタイミングなので、エンディングノートを作り始めるには良いタイミングです。
自分たち老夫婦だけの暮らしになって、お互いを心配しながら暮らすことになると「万が一のこと」を考えるタイミングになります。
そんな時に、エンディングノートを作っておけば、亡くなった時だけでなく、一方が病気になった時、大切なことを確認できる覚書としても活用できます。
自身や配偶者が病気になると、何から何まで1人でこなさなくてはなりませんが、別の意味でいえば「家の中のことのすべてを理解できる」きっかけでもあります。
そのきっかけを活かして、エンディングノートを作って万が一の時の覚書にしておく方法があります。
まとめ
エンディングノートの話をすると、自分が死ぬことを考えるようで、なんだか重い気持ちになると、作ることを忌避する人もいますが、私はむしろ元気な時に作って欲しいと思います。
それに、エンディングノートは1人で作るものではなく、夫婦一緒に作ることで子どもたちが安心できるものでもあるのです。
現役世代の時は、お互いに収入があり、お互いに財産を管理していたこともありましたが、高齢になるともうお互いに何かがあった時には支え合って助け合うことが必要になりますから、その時にエンディングノートがあれば、すぐに大事なことを託すこともできるのです。
特に、退職して間もない時期、残された人生を有意義に過ごすために、改めてセカンドライフを見直す時にエンディングノートを作っておくことで、自分たちも子どもたちも安心できると思います。
ぜひこの機会に、エンディングノートを作ってみてはいかがでしょうか。