結婚式など、さまざまなライフイベントが縮小傾向にある昨今。
葬儀に関しても必要性に疑問を感じている人もいるのではないでしょうか。
そこで本記事では、葬儀が担う本来の役割を解説します。
「なぜ行うのか」を知ると、いつか経験する大切な人の葬儀がより良いものになるでしょう。
祭壇の意味も踏まえながら詳しく解説するので、ぜひ参考にしてくださいね。
目次
葬儀とは
「葬儀」は「葬送儀礼」の略語です。
故人を偲んで成仏祈願をするため、僧侶を招いて読経や焼香などを行います。
そのため葬儀は、宗教的な意味合いが強い儀式といえるでしょう。
また親族や親しい友人などが集まり、故人とお別れをする場でもあります。
普段なかなかそろうことのない人々が集い、故人の思い出話に花を咲かせるのも立派な供養です。
つまり葬儀とは、故人と過ごせる最後のときであり、故人の冥福を祈る大切な儀式なのです。
通夜の役割
通夜とは、火葬の前日に故人とともに夜を過ごすことをいいます。
現在のように医療が発達していない頃には亡くなったと思った人が実は仮死状態であり時間が経過すると意識を戻したといった事例があったそうです。
そのような理由から24時間以内に火葬を行うことが出来ないという法律ができたと言われております。
通夜は故人の蘇生を祈る儀式でもあったそうです。
以前の通夜は親族が夜通し故人のそばで過ごし、ろうそくや線香の火を絶やさないよう見守る儀式でした。
現在は1時間ほどで終わる「半通夜」が一般的です。
地域によって違いはありますが、僧侶による読経や焼香を行ったあと、親族が故人のそばで食事をすることが多いでしょう。
葬儀と告別式との違い
一般的に私達が思う葬儀は正式には葬儀・告別式となります。
葬儀は宗教的な儀式であり、告別式は、導師が退場した後の故人とのお別れの場と言えるでしょう。
最近では友人や知人、仕事関係者といった一般参列者もお棺に花を手向けます。
著名人などの大型葬を行う場合、準備時間がかかる為、葬儀は小規模で行い、後日お別れの会として告別式を実施することもあります。
密葬という言葉がありますが、元々は前述のように後日大々的に告別式を行う場合に小規模で行う葬儀のことをさしていました。
葬儀が担う5つの役割
通夜や告別式と比べると、葬儀は宗教色が強い儀式です。
しかし、それだけではありません。葬儀には、以下の重要な役割があるのです。
葬儀を行うことで、これらの役割を果たせます。
1つずつ見ていきましょう。
社会的役割
人間は生きている間にさまざまな人と関わり合い、関係を築きます。
葬儀にはこういった人々に故人の死を知らせる社会的な役割があるのです。
死亡届の提出など、行政機関での手続きもこれに該当します。
またかつては、継承者を紹介することで世代交代を周知させる目的もありました。
物理的役割
遺体は時間が経つと腐敗します。
死者の尊厳を保つため、土葬や火葬といった方法で遺体を処理する必要があるのです。
遺体を葬ることは、死者との決別にもつながります。
心理的役割
葬儀は遺された人々が故人の死を受け入れるためのものでもあります。
亡くなってすぐは、死の事実を認められないこともあるでしょう。
しかし通夜や葬儀・告別式、法要といった一連の儀式を行うなかで、大切な人を亡くした悲しみや心の痛みを受容し和らげていくのです。
つまり葬儀は、遺族の心の整理やケアをする役割も担っています。
教育的役割
大切な人の死を通し、生について考える場でもあります。
生きていくなかで死に触れる機会は多くありません。
そのため命があることが当たり前になり、ときには軽く扱ってしまうこともあるでしょう。
葬儀に立ち会うことで命の大切さを知り、生き方や在り方を考え直すきっかけになるのです。
宗教的役割
葬儀は「葬送儀礼」の略語であり、葬送儀礼とは死者を葬るための一連の儀式をいいます。
宗教や地域によって違いはありますが、臨終を迎えたあと遺体を清め、通夜や葬儀・告別式、火葬を行うのが一般的です。
葬儀は故人が信仰する宗旨宗派で行われ、宗教的な意味合いが強い儀式といえます。
祭壇の意味
葬儀に欠かせないものの1つに祭壇があります。
宗旨宗派により形状は異なりますが、葬儀において大切な役割をもっています。
ここからは、祭壇の役割や種類を紹介します。
祭壇を使用する理由
葬儀で祭壇を使用する理由は「死後の世界での幸せを願っているから」です。
仏式の祭壇は死後の世界を表しています。
ご本尊の下に故人の遺影を飾ることで、安らかに過ごしてほしいという願いを込めているのでしょう。
龍や鳳凰といった架空の存在を用いるのは、現実とは異なる世界を表現するためと言われています。また白木を使う地域が多いのは、死者のために急ごしらえの祭壇を使用していた名残だそうです。
他にも神道の祭壇は神様へのお供えを、キリスト教では教会をイメージしています。このように宗教によって祭壇の意味は異なりますが、「故人の幸せを願うため」という思いは共通しているのです。
近年における祭壇の役割
火葬が一般的になり野辺送りがなくなった現在では、祭壇の役割が少しずつ変化しています。
故人を供養するために供物などを並べますが、「故人の人となりを表すもの」「遺族の偲ぶ気持ちを表現するもの」という意味合いが強くなりました。
たとえば祭壇を故人のイメージに合った花で飾ったり、故人の嗜好品を供えたりします。
また最近では伝統的な白木祭壇ではなく、生花だけで作られた生花祭壇も人気です。やわらかい雰囲気やデザイン性の高さがその理由でしょう。
このように近年の祭壇は宗教的な意味合いが薄くなり、「故人らしさ」を表現するものへと変わっているのです。
祭壇の種類
祭壇とひとことでいっても、実は宗教によって形状や配置、装飾品などが大きく異なります。
また先ほど触れた生花祭壇は、どの宗旨宗派でも使用できる祭壇です。
葬儀社や宗教者によって多少の違いはありますが、一般的な4種類の祭壇をご紹介します。
白木祭壇
仏式の葬儀で用いられる代表的な祭壇です。
野辺送りの際に棺をおさめていた輿が一番上にあり、位牌や遺影、供物などを置く伝統的な祭壇といえます。
厳かな雰囲気があるので、昔ながらの葬儀を行いたい人におすすめです。
袖を追加して祭壇の幅を拡張できます。また、左右に花を飾り彩ることも可能です。
神式祭壇
神式の葬儀で使われる祭壇です。
仏式と同様に、白木の祭壇がベースとなっています。
祭壇には神様へのお供えものとしてお酒や鯛、榊などを飾ります。
また鮮やかな五色旗を左右に置くのが特徴です。
キリスト教祭壇
キリスト教の葬儀で使用する祭壇です。
一番上に十字架を掲げ、左右にろうそくを配置します。
花祭壇が一般的で、白い花を飾ります。
仏式や神式と比べると、シンプルな祭壇です。
生花祭壇
生花のみで作られた祭壇です。
使う花の色やデザインをある程度自由に選べます。
故人が好きだった花を使ってオリジナルの祭壇を作ることも可能です。
宗教色がなく、宗旨宗派を問わず使用できるという特徴があります。
デザイン性に優れており、やわらかい雰囲気を演出できることから、選ぶ人が増えている祭壇です。
葬儀は死を受け止め乗り越えるためのもの
葬儀は宗教的な意味合いが強い儀式ですが、現在は通夜や告別式と合わせて葬儀と捉えられることが増えてきました。
さまざまな役割を担っており、特に遺された人々にとっては死の事実を受け入れ心を整理するためにとても重要な儀式です。
時代の流れとともに、やり方は少しずつ変化しています。
しかし、故人を偲ぶ気持ちは変わりません。
葬儀の本来の意味を知ることで、故人との最後の時間がより大切なものに感じられるのではないでしょうか。